こんにちは。
今日は厳冬期の木曽駒ヶ岳に登った記録です。
木曽駒ヶ岳について
木曽駒ヶ岳とルートについては過去記事を参考にしてください。
山行記録
10:10 千畳敷駅 ー 11:30 中岳 ー 12:00 木曽駒ヶ岳 ー 12:30 中岳 12:45 ー 13:30 伊那前岳手前2911m地点 ー 14:35 千畳敷駅
白と黒と青の世界へ
はじめに
1月の3連休は、1日目に蓼科山に登り、2日目は木曽駒ヶ岳に行ってきました。
(蓼科山の記録はまたの機会に…。)
1月に入ってグンと気温が下がり、わたしの住む地域は平地でも-10℃近くになるのがデフォルトになってきましたが、より高見を目指して(?)厳冬の3000m級の山に足を運んだわけです。
メンバーは、山形で大変お世話になった山の師匠こうさんと、こうさんの登山サークルの方2人の4人です。
初めての厳冬期中ア、目がさえるほどの青空も見えて、わくわくがとまらない山行になりました。
菅の台バスセンターから千畳敷駅
菅の台バスセンターに集合し、ロープウェイ駅への始発のバスに乗り込みました。
…正確には、乗り込む予定でした。
思ったより早い時間から列ができてしまい、始発の次の臨時バスになってしまいました(笑)
しかし天気予報が良い割には、人の出は少なかったと思います。
さすがに関東圏からは自粛ムードですよね、寒波来てたし。
久しぶりのバスだったので、見事に酔いました。
ロープウェイ発車駅であるしらび平駅では、便の遅れが出ていたので20分ほど待つことになりました。
やっと乗れたロープウェイは夏に来たときよりもかなり空いていて、快適な空中旅ができました。
空中散歩の間、眼下に広がる白銀の世界に胸が高鳴りました。
圧倒的積雪。
さらっさらの乾いた雪です。
見ているだでもお腹いっぱいの絶景でした。
千畳敷カールから乗越浄土
ロープウェイを下りて、千畳敷駅でアイゼンをつけました。
前日の蓼科山に続きまだ2回目のアイゼン、装着時の手際が悪くて自分でもドン引き。
紐を入れる方向を間違えたり、結び方が違ったりして何回かやり直しになりました(笑)
これは回数重ねて慣れていく他ない…。
ようやく足回りの準備を整え、いざ、雪の世界へ足を踏み入れます。
\どどん/
千畳敷駅を出ると視野いっぱいにこの絶景。
文字通り息をのんだよ。
着いた時はまったくトレースのなかった千畳敷カールですが、わたしたちが歩き始めた時は列ができていました。
先頭でラッセルしてくれている勇敢な人々が遠くに見えました。
心の中でありがとさんと思いながら、我々は堂々とラッセル泥棒(笑)
これも作戦、とこうさん。
ふむ、なるほど、ラッセル泥棒も作戦のうち、メモメモ。
サングラスをしていても目が眩むような純白の雪に、少したじろいでしまいました。
夏はジグザグに登る千畳敷カールですが、冬は潔い直登。
この一本のトレースをつけた先頭の人は、さぞ達成感に満ちているのだろうなと少し羨ましいです。
ピッケルで刺したときにできた雪の穴を覗きこむと、光を透かしたエメラルドのような、何の不純もない美しいあお色が見えました。
こんな綺麗な雪が日本にも降るんですね。
まるでヒマラヤの雪を見たかのような気分になりました(ヒマラヤ行ったことないけど)。
カールの上部は急登です。
マイペースな誰かさまが上方で列をせき止めていて、最終的にすごい行列になってしまいました。
これだけの人数をせき止めていてもなお、先頭をゆっくり登り続けるメンタルがすげえよ。
もっふもふの雪にたくさん足を取られましたが、ゆっくりペースのおかげで体力を消耗せずに乗越浄土まで登りきることができました。
たくさんの人が登った後だったのでステップが切ってあってよかったです。
乗越浄土から中岳
乗越浄土には冷たい風が吹き抜けていました。
ここで水を飲んだりの休憩をとり、まずは中岳を目指します。
余談ですが、厳冬期の太平洋側の山岳はとても乾燥するので、歩いていると体の水分も気づかないうちにどんどん失われてしまいます。
夏よりも意識的に水分をとらないと足が攣ったりするので、こまめな水分補給がとても大切です。
わたしはそれで2回ほど足が攣りひどい目に遭ったので(笑)、今回はグリーンダカラをたくさん飲んで水分不足を予防しました。
失敗から学んだ、えらいえらい。
乗越浄土から中岳への道のりは、残念ながらあまり晴れ間を拝むことができず、特に写真も撮らず寒風に耐えながらひたすら歩きました。
アイゼン歩行は傾斜が緩いところの方が難しいです。
フラットフッティングを強制されるので、足回りの関節が無理に伸縮されて痛い。
足をきちんと置くことを意識しないとまだうまく歩けなくて、ゆっくり考えながら慎重に一歩を運びました。
そうしてようやく中岳に登頂です。
このころから少し青空も見えてきました。
天候回復に期待大!
ちなみに中岳には、山頂の西側を通るトラバース道があります。
わたし的に夏はよく使う道なのですが、結構な岩場なので積雪期はやめた方が良いです。
冬は雪崩や滑落の危険があるため、稜線を歩くのが基本らしい。
雪山は色々と考えなければいけないことが沢山あるのだな…。
中岳から木曽駒ヶ岳
中岳から木曽駒ヶ岳との鞍部へ一旦下ります。
アイゼンをつけて、雪と岩がミックスした斜面を下るのにはなかなか苦戦しました。
油断するとアイゼンごと岩に乗ってしまい、足首を軽く捻るということが多々あり。
これが痛いのよう…。
歩くにつれて徐々に天候が良くなり、眩しい青い空が広がりました。
尚風は強し。
バラクラバからほんの少しはみ出した左頬に西風が当たり、棘が刺さったようにチリチリと痛かったです。
気温は-20度に迫る低温で、風速は10~15m/sほどだったと思います。
鞍部からは木曽駒ヶ岳への登りです。
ここを歩くなんて最高でしょ。
登るにつれてどんどん良くなって、俄然元気が湧いてきます。
もはや黒色に近い空に、ドキドキしちゃうね。
みんなで歓声を上げながら、木曽駒ヶ岳山頂に到着しました。
駒ヶ岳神社の鳥居が凄いことになっていました(笑)
木曽駒ヶ岳山頂
山頂は風が強くて寒かったですが、とにかく空が青くて青くて感動しました。
果てしなく続く濃い空。
これを眺めるだけで、悩みなんて一瞬で吹き飛びます。
樹氷もなかなかに育っていて美しき。
雪山はなんでこんなに美しいのだろう!
わたしの現状一番あったかい服装を撮り納めてもらいました。(笑)
全部お気に入りのギア。
お気に入りに囲まれるのって幸せ。
西に見えた木曽前岳がホイップクリームたっぷりでケーキみたいでした。
行ってみたいな。
木曽駒ヶ岳から伊那前岳
山頂は寒くて長居できないため、座って休憩とはいかずに下ることになりました。
冬山はゆっくり休憩できないのが辛いよなあ。
中岳に戻り、岩陰の風を防げる場所で昼食にしました。
風が防げるとはいえ、とにかく寒いことに変わりはありません。
止まった途端、手先と足先から徐々に凍っていく感じが怖いほどです。
そんな冬山では、何においてもスピードが求められます。
昼食は軽めのをパパっととってランチタイムは終了。
昼食後は、これまでずっと雲で隠れていた中アの南の方も雲が少し晴れてきました。
そんなわけなので、中岳の下りは絶景の撮影大会になりました(笑)
何を撮っても映えちゃうよ。
眼前には宝剣岳様と三ノ沢岳様です。
中アもイケメン揃いなのですね。
推しはやっぱりコレですけどね。
この岩肌がすごい。
冬期に登れるのだろうか。
どこを登るのだろうか。
見れば見るほど、オラわくわくすっぞ。
以下、こうさんが撮った写真です。
師匠は写真もうまいんです…わたしはこんなの練習しても絶対に撮れない(´-ω-`)
わたしのカメラは低温下ではほとんど使い物にならず、今回は写真を撮ってもらう側になってしまいました。
普段撮る側なので、撮ってもらうのはなかなか新鮮。
嬉しや嬉しや(^o^)
乗越浄土まで戻り、ここから今度は伊那前岳へ向かいました。
はじめは稜線の西側をトラバースしながら進みます。
雪山のトラバースって迫力がありますよね。
左下を見ると、白い雪の斜面が谷底へ落ちていて目を見張りました。
しばらく行くと、今度は東側にまわり込んで再びトラバース道です。
この頃には先ほどの青空は一体どこへ行ったのやら、一帯は白いもやもやに包まれてしまいました。
こっちのトラバースは西側に比べてかなり恐怖心煽られるやつでした。
あくまで初心者目線ですが、右下はスコーンと谷底まで斜面が落ちていて、スリップしたらとまるのだろうかという不安が常に頭にありました。
加えて、誤ってハイマツ帯に入ろうものなら膝下まで踏み抜きます。
先行者のトレースは風に消されてほとんどわからないので、なるべく最適な道を選ぶように、かなり緊張しながら歩きました。
ガスると上も下も前も後ろも左も右も全て白くなるので、自分がどこを歩いているのかわからなくなるようなふわふわした感覚に陥ります。
これがいわゆるホワイトアウトというものですが、トラバース中、一瞬だけそんな錯覚になりました。
足が地についてるのかさえもわからなくなるの、なんか面白かったです。
伊那前岳手前の2911m地点まで歩きましたが、天気がどうもよくないので引き返すことになりました。
コロコロと移り変わる冬山の天気、これは読めないですね。
下山
緊張感のあった伊那前岳へのトラバースに比べ、千畳敷カールの下りは、それはそれは楽しいものでした(笑)
登りは先行者が作った決められたトレースを登りましたが、下りはトレースのないもふもふの雪を歩くことができました。
膝上まで埋まるカールの雪は、足への負担を軽減してくれる衝撃吸収マットのような感じで、いつまでも歩いていける気がしました。
足を上げるのに疲れたら、こんな風に空を見上げても大丈夫(笑)
最高に気持ちが良いよ。
太陽と飛雪と、我々がはしゃいだせいでできたデブリと。
雪山の美しさにすっかり魅了されてしまいました。
カール上部はかなりの傾斜なので、ここで尻セードを試みます。
しかし、ここまで深い雪だとうまく滑ってくれません…。
尻セードもなかなか難しいもんなんだな。
先行した誰かの尻セード跡を滑ると、ゆっくりですがスムーズに滑ることができました。
わたしのハードシェルは夏用のレインウェアなので、抵抗がない分他の人よりスルスル滑ります。
尻セードにはもってこいですが、滑落した時に初速度がつくことを証明したようなもんなので、冬山用のちゃんとしたハードシェルを買おうと決意しました。
...雪山の初期投資侮れねえ。
雪の上をみんなで転がりながら、カールの底までやってきました。
この時間は人が少なくなり、静かな雪のカールを堪能できました。
シュールなのに無駄に画質良い写真。
やっぱフルサイズで撮ると違うね。
心ときめく雪の山。
撮ってるときは、だれだか知らない2人がフレームインしてきて邪魔やなと思ったことは否めないけれど、こう見るとなかなか良い写真になっているではないか。
感謝。
カール内でずいぶん遊んでいたので、乗る予定のロープウェイ発車時刻が迫っていました。
名残惜しくも駅へ向かいます。
もっと遊んでいたかったな。
隙あらばピッケルを掲げる我ら。
上手に撮ってくださる、我々専属のカメラマン(笑)
駅への最後の登りは、結構ふとももにぐっときました。
慣れないアイゼンで良く歩いた。
おかげで両足捻挫したわ(下山後に発覚の事実)。
おつかれさまでした。
おまけ
ちなみに、乗る予定だったロープウェイは寸前のところで逃してしまい(笑)、15分後の臨時便になんとか乗せていただきました。
最後に散々だと思いましたが、この臨時便が何とわたしたちの貸し切りで、周りを気にすることなく最後の空中旅を楽しむことができたのでした。
それから帰りのバスも乗客はわたしたちと従業員の方だけで、ゆったりとくつろぎながら帰ることができました(尚、酔った)。
終わりも良くて全て良し。
最高の雪山山行でした。
反省
アイゼン歩行がどうも上手くないらしい。ちょっとでも調子に乗ろうものなら即捻挫です(笑) 特に下りには参りました…。この山行の翌日には、両足の外側くるぶしの下が激痛で大変でした(笑) 湿布を貼りまくったけれど、未だに若干痛い。アイゼン歩行を意識しなくてもできるように、アイゼンを履いての山行を増やしたいなと思います。こりゃあ習うより慣れろだ。
ピッケルの使い方は、最初は師匠のマネっこでやってたものが、やっているうちにだんだん自分のものになってくる実感があって面白かったです。雪山ではピッケルの安心感が半端ない。色々に使っていると、ピッケルが本当によく考えられて作られたものなんだと思い知ります。そしてベントシャフトにして良かった。ピックとスピッツェを使うような急登では、ベントしてた方が使いやすいと思いました。ブレードで雪をかくのも楽しいよ。今回は歩行方法に合わせた色んなピッケルの使い方を師匠に習えたので、次は滑落停止のやり方なども教えてもらえたら良いなあ。
水分補給をこまめにしたことで、ようやく足が攣らない雪山山行になりました(笑) 雪山での水分補給は夏山より大事だと思う。喉が渇く自覚がないのに、身体の水分は失っているのってめちゃくちゃ怖いことですよね…。問題は、保温ボトルじゃないものだとザックの中に入れていても凍ってしまうということ。ペットボトルに入ったグリーンダカラ(わたしの命の水(笑))は今回背中側に入れていましたが、それでもやっぱり少し凍ってしまいました。グリーンダカラは温めても成分は変わらないと聞くので、今度からは温めたダカラちゃんを保温ボトルに入れるのもありかなと思います(お味のほどは…)。
あとはカメラ問題が一番大きかったです。一眼レフが全く使い物にならなかったよ。カメラはショルダーハーネスにホルスターでつけているのですが、外気温の低さと風で機械が故障寸前(笑) 行動中、バッテリーは抜いてあたたかいポケットの中に入れておき、撮るときにだけ取り出して使う、というのを繰り返していたのですが、そんな苦労をしても結局バッテリーはすぐおじゃんになりました。バッテリーは寒さに弱い、それはスマホも例外ではありません。スマホは寒すぎて動きがおかしくなってました。カメラもスマホもよく生きて帰ってこれたなと(笑) 一眼レフはペンタックスが堅牢で良いみたいですよね。ここにきてカメラも買い替えか…?(いや、無理。) カメラもスマホも細かい作業になるので、その都度手袋を外すのですが(本当は冬山で素手になるのはタブーです)、5秒で手の感覚を失います(笑) 一回冷やすとなかなか温まらないしね。スマホはタッチペンが便利らしいので、次の山行では導入してみようかしら。一眼レフはとりあえず保留です(笑)
感想
いつかは行ってみたかった憧れの厳冬期木曽駒ヶ岳でしたが、こんなにあっけなく登れてしまうとは思ってもいませんでした。すべては山の師匠こうさんのおかげです。こうさんは、わたしが山形にいた頃からいつもわたしの想像をはるかに超える素晴らしい山行に連れ出してくれます。こうさんとの山登りは、ただ楽しいだけのお遊び登山ではなく、同時に貴重な学びの場にもなります。今回も、冬山の基本的な歩き方、道具の使い方、展望できる山々たちの名前、ちょっとした工夫の数々…色んなことを教えていただきました。これでわたしも少しは賢くなったぜよ!(笑)
そしてこの登山では、こうさん率いる登山グループ所属のお2人ともご一緒することができ(お2人とも超良い人でした)、山を通じた新たな出会いができたのも嬉しかったです。コロナ禍なのでバラクラバやマスクを外した会話などは避けなければならなかったし、下山後においしいものをみんなで食べることも控えましたが、それでも山でのつながりはとても良いものだと感じました。また次にお会いするのも山の上が良いな♡
久しぶりにわっくわくするような山旅ができで大満足です。わたしももっと経験積んで知識つけて、こうさんのように雪山も自由自在に歩けるようになりたいです。