やまとりにっき

山登りやお出かけを中心とした日々のあれこれです

<山行記録> 南八 阿弥陀岳 ~ラッセルで挑む憧れの山~ 2022.2.11

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こんにちは。

今日は阿弥陀岳に登った記録です。

阿弥陀岳について

阿弥陀岳(あみだだけ)は、長野県原村茅野市にまたがる標高2,805mの山です。

八ヶ岳連峰に属しています。

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山岳宗教に由来した山で、山頂には阿弥陀如来像をはじめ、多くの碑が奉じられています。

一般道は御小屋山からのルートと、中岳からのルートの2つ。

この他に、南稜、中央稜等の入門バリエーションルートや、北西稜、北稜と言ったクライミングルートがあり、実力や目的に合わせて様々に楽しめる山とも言えます。

 

参考:

阿弥陀岳 - Wikipedia

阿弥陀岳|八ヶ岳登山ルートガイド

 

山行記録

6:30舟山十字路駐車場 ー 8:35御小屋山 ー 12:50摩利支天 ー 13:10阿弥陀岳山頂13:20 ー 15:15御小屋山 ー 16:20舟山十字路駐車場

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憧れの頂へ

はじめに

この間の三連休は、こうさんYさんと3人で厳冬期の阿弥陀岳に挑んできました。

ちょうど去年の今頃に、同じ南八ヶ岳の赤岳へこうさんと一泊で登ったのですが(記録は書けておりません…)、山頂から望んだ真っ白い阿弥陀岳に圧倒され「来年は登ってやるぞ~」という夢というか目標というかを心に秘めておりました。

今回はそれを叶えるべく、こうさんからお誘いをいただいたというわけです。

前日南岸低気圧の影響で大雪となり、当日はラッセルを強いられる大変な行程になりましたが(笑)、天気も見方をしてくれて最高に楽しい登山になりました!

※今回一眼レフを携行していなかったので、写真はほとんどこうさんYさんが撮ってくれたものを拝借しております。

 

舟山十字路登山口から御小屋山

阿弥陀岳の主な登山口は3つありますが、今回は行ったことのない舟山十字路から登ることになりました。

阿弥陀南稜や中央稜などを登る際に使われる駐車場です。

あとはクリスマスルンゼなどの氷瀑に御用がある方。

 

前述の通り、前日は麓でも夜中まで雪が降っていたため、この駐車場までの林道は車のトレースも全くないほど雪に埋もれてしまっていました。

今回はこうさんの4WDエスティマで向かいましたが、さすがの運転技術とトヨタ車の力で無事駐車場まで入ることができました。

積雪がある場合、まず2WDでは入らない方が良いと思える林道でした。

 

通行止めゲートの前に駐車スペースがあります。

10台くらいはとめられそうなスペースに見えました。

 

到着時は真っ暗だった駐車場も、準備を進めるうちにだんだんと明るくなってきました。

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天気予報は曇りっぽかったけど、青空が広がっていてなかなかよさそうではないか!

 

ゲート前の登山ポストに登山届を提出し、いざ出発です。

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とても八ヶ岳とは思えないような積雪…。

簡単には登頂させないぞという空気が、この登山口でもひしひしと伝わってきます。

 

はじめの装備はワカン×ストック。

御小屋山まで急登はありません。

足首上ほどの新雪を3人で固めながらゆっくりと歩きました。

 

ゲート先に分岐があり、御小屋尾根は左手へ進みます。

ちなみにまっすぐ行くと南稜・中央稜の取り付きに出るようです。

 

御小屋尾根に出ても積雪量は減らず、尾根を登っていくごとにだんだん多くなっていきました。

それでも積雪前のトレースは踏み固められているようで、トレースを外さない限りは深くてもふくらはぎ程度。

ただ外すと太ももまで埋まります(笑)

 

スタートから2時間ほどで御小屋山に到着しました✦

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八ヶ岳山荘からの入山者がいないかとちょっぴり期待しておりましたが、この先もノートレースだったので気合が入ります。

しかし御小屋山で小休止していた時、つぼ足でさっそうと追い抜いて行かれたソロお兄さんがいて、御小屋以後この方がラッセルをしてくれました。

無言で通り過ぎられたのでありがとうございますとも言えませんでしたが、つぼ足とはいえ一人分のトレースがあると少しだけ楽になりありがたかったです。

 

御小屋山から阿弥陀岳

お兄さんを追って御小屋山を出発。

御小屋山からは一旦下り、その先鞍部からの登り返しが待っています。

 

展望台なるところで、この日初、阿弥陀岳様の姿を間近で拝みました。

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…あかん、遠い。

首が痛くなるくらい大きな白い山に、ほんの少し怯みます…少しだけね。

 

右手にのびるのは中央稜でしょうか?

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こんなに晴れると知っていたら、わたしも一眼レフ持ってきたのになあ。

 

適当な場所でワカンをアイゼンに変えました。

ついでにバラクラバにヘルメットもかぶりました。

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ここからワカンは必要ないと判断し、ワカンとストックは登山道脇の木の下にデポしておきました。

 

展望台から先は、傾斜がぐんぐん上がっていきます。

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どのくらいかというと、前の人のアイゼンが鼻先をかすめるくらい。

一生懸命ステップを切るのですが、湿り気のないサラサラ雪なのでズルズル崩れます。

容赦ない急登攻撃に、HPが減っていく我々。

 

山と高原地図に記載されている「シャクナゲのトンネル」辺りでは、生い茂るシャクナゲにザックやピッケルがひっかかり、「うわあぁぁぁ」と叫びたくなりました(笑)

枝を避けたつもりががっつり引っかかっていたりして、とにかくとにかくもどかしい思いでした。

シャクナゲの攻撃は地味すぎるよ阿弥陀様…。

 

反り返るような急登にスピードダウンしながらも、なんとか森林限界を超えました。

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森林限界超え

Yさんの背後に槍・穂高連峰

にやけちゃうくらい良い天気!

 

日光をさえぎる木がない場所は、雪が融けかけのぐずぐずになっていてさらに歩きにくかったです。

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プチトラバースになんだかヒヤヒヤ。

 

真っ新な尾根上のルートとりは難しいですが、とりあえず先行するお兄さんの足跡を追います。

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ミスると踏み抜きます。

お兄さんの足跡は独自のルートを辿っていましたが、こうさん曰く「夏道辿ればいいんじゃないかな」とのこと。

とは言え下がどうなっているのかわからない雪の上に踏み出す勇気はわたしにはなく、お兄さんのトレース頼みで歩きました。

人が敷いたレールの上しか歩けないのか、わたしよ。(笑)

 

こうさんはひとり、こうさんのルートを行きます(たぶん夏道)。

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確かにそっちの方が踏み抜き少なくて歩きやすそう…。

これこそが己のレールを歩く山男也。

 

少し傾斜が緩くなったところでこうさんYさんを待っていたら、上から先行していたお兄さんが下ってきました。

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左上から下ってくるお兄さん

もうピークハントしたんか!?ツワモノすぎん!?

と一同びっくりしました。

でも後で分かったことですが、ピーク手前でトレースは引き返しており、タイムオーバー撤退だったのかもしれません。

ラッセルありがとうございました。(下りも無言で通り過ぎられたので言えませんでした…(笑))

 

それにしても、森林限界上部でも恐ろしいほどの急登です。

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Yさんがかっこよく撮ってくださった休憩シーン(笑)

夏来たときこんな急登だったっけ…と考えてしまいました。

…うん、確かに夏も急登だったな…っていう結論に至りました。

無駄な回想。

 

夏道に入るとロープが出ていました。

半分埋まっていたので掘り起こして使わせていただきました。

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ロープ出てた

この大雪の後でも出ていたので、ちゃんと探せば冬期も使えるロープなはず。

ロープは新品同等の真新しいものに見えました。

変えたばかりなのでしょうか。

登りやすくて助かります。

 

振り返るとすごい景色。

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登った距離が一発で分かる展望です。

真っ白けな茅野市が印象的でした。

 

最後のロープを登ると中央稜との分岐に出ました。

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背後に南ア

ここでザックを下ろしてしばし休憩。

 

ここからの権現岳ギボシはかっこよかったです。

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権現も厳冬期に行ってみたい山のひとつ。

 

行動食で英気を養い、ここからいよいよ核心部に突入です↓(やっと)。

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これが阿弥陀のナイフリッジ。

 

ぱっと見やっばいじゃんと思いましたが、足を踏み出してみると意外といける。

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案外スイスイ

落ちたら大変ですが、相当なへたをしない限り大丈夫です。

ただトレースが無かったらもっと厳しかったと思います。

お兄さんに感謝です。

 

ナイフリッジが終わると、大きな岩を南側に回り込みます。

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岩が出ているので、アイゼンを引っかけないようにだけ注意です。

 

岩が終わると、眼前に赤岳様が現れました。

これを眺めながら、すぐに鎖とハシゴ場です。

この辺りが摩利支天と呼ばれる場所。

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ハシゴを下るこうさん

鎖もハシゴも短いので一瞬だけ気を引き締め、アイゼンを引っかけるヘマだけはしないよう慎重に。

 

さて、ハシゴを下ったところでふと気が付きました。

「隊長、トレースが消えてます。」

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ナイフリッジにトレースついてないです隊長

先行していたお兄さんはここで引き返したようでした。

阿弥陀制覇にふさわしすぎるクライマックスを用意してくれていた…。

 

先にこうさんが偵察し、「行けそうだけど念のため」ということでスタティックロープを張ることになりました。

 

こうさん先行。

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かっけえ

チャクラを背負うこうさんの背中はいつでも頼もしく見えますが、この時はより一層頼もしく見えました。

アニキ~(感嘆)。

 

ロープは近くの木をアンカーにしています。

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こうさん埋まってる…

少しヒヤヒヤしましたが、さすが師匠、無事渡り切りました。

 

OKの合図でわたしも渡ります。

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高度感は思っていたほどではなく、足元もしっかりしていて恐怖感はありませんでした。

トレースがあればロープも不要です。

 

3番手のYさんは序盤で「おっとっと」とバランスを崩していて心臓に悪かったです(笑)

ヒヤヒヤさせてくる山男。

 

ロープは下山時に回収することにして、ナイフリッジに放置していきました。

 

ナイフリッジが終わると最後の登り。

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ここまで来ても急登ですが、この登りは長くは続きません。

 

山頂間近のところで、こうさんが「先行っていいよ!」と気をきかせてくれ、ビクトリーロードを先行させていただきました。

が、ここが一番積雪が多くて大変でした。(笑)

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最後にこのラッセル…鬼だ…

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山頂標識見えてるのに~…

 

最後は気合のみで頑張りました!

無事、厳冬期阿弥陀岳登頂成功です✦

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衝撃的な達成感。

 

山頂にはトレースひとつなく、この日の登頂はわたしたちが一番だったようです。

誰もいない山頂に最初の足跡をつけるのがどんなに気持ち良いことか、この日までわたしは知りませんでした。

 

阿弥陀岳山頂

山頂から目の前には、大迫力の赤岳が聳え立っていました。

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去年はあの頂からただただ阿弥陀に憧れるだけだったのに、いつの間にかこちら側から赤岳を眺めている自分に驚きました。

 

横岳や硫黄岳もばっちり見えています。

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良く降ったなあと思わざるを得ない白さ。

 

硫黄の向こうには北八の山々。

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ため息しか出ません。

 

カメラマンが2人もいるので、良い写真をたくさん撮っていただきました。

ありがとうございました。

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そういえば、ちゃんとした山頂標識は見当たりませんでした。

恐らくですが雪の下に埋まっていたのだと思います。

南稜の案内標識に阿弥陀岳山頂と書いてあったので今回はこれで我慢です(笑)

 

下山

ラッセルとナイフリッジで時間を取られ、CTもかなり押していたので山頂ではあまりゆっくりしていられず、10分ほどで下山を開始しました。

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帰りマアス

(後ろのYさんがカワイイ)

 

ナイフリッジ通過。

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ロープを回収している間に、2名のパーティが登ってこられました。

ラッセルにすごく感謝していただいて、なんだか嬉しかったです(*'▽')

 

次のナイフも通過。

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核心部は去りました。

 

次は、激登りしたところを激下りします。

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登りよりも雪が多少緩くなっていたので下りにくかったです。

 

雲も多くなっていて、高い山々は隠れてしまいました。

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登りでアルプスを眺められて良かった。

 

こんな感じで、傾斜感伝わったかな~。

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写真で斜度を伝えるのは難しいですが、お2人の写真は上手なのできっとわかってもらえるはず。

 

ザクザクと下って、危ないところはすべて通過しました。

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名残惜しいような気もしますが。

 

樹林に入るとあとはひたすらに下るのみ。

急坂過ぎて力を入れても滑ってしまうため、エスカレーターのように下りました。

どうしても踏ん張りが効かないところは半尻セードで滑り下るしかありません。

トレースを崩すようで申し訳ありませんが、どうしても仕方ないのです…。

 

樹林の下りは永遠でした。

これを登ってきたことが信じられないと思うほど、長い長い下山路でした。

母指球が痛くて疲労骨折するかとさえ思いましたが、ふらふらと林道を歩いて無事に駐車場まで戻ってくることができました。

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下山時刻は16:30。

約10時間の闘いでした。

お疲れ様でした!

 

感想

感無量とはこのことだと思います。

ずっと憧れていた厳冬期阿弥陀岳

わたしには絶対登れないと思っていました。

こうさんが「いや、絶対大丈夫でしょ!」と連れて行ってくださらなければ、一生登れなかったと思います(度胸がないので)。

こうさんYさんに感謝です。

登山を始めた数年前のわたしに、「あなた、未来で厳冬期阿弥陀に登るよ、すごいでしょ」って言ってあげたい。

きっと信じてもらえないと思うけど(笑)

 

トレースを作るということがとっても大変なことなんだと、今回の山行で気づかされました。

トレースを作るというのは、ただ新雪をかき分けて歩くということではありません。

トレースを作るというのは、後続の仲間・他パーティが歩きやすいよう配慮しながら道を作るということです。

ステップはなるべく踏み固める、木の下をくぐる時には枝の雪を払い落としておく、枝が落ちていたら脇に寄せておく…たくさんのことを考えながら歩かなければなりません。

そして一番大事なのは、安全なルートをとるということ。

一番にラッセルをする人は、後続の安全を考えながらトレースを作らなければいけません。

そのことを深く学んだ一日になりました。

雪山って奥が深い…。

 

ラッセルは大変でした。

登っても登っても目の前には雪があって、逃げ出したい気持ちにもなりました。

でも、嫌いというわけではありません。

全身雪だらけになりながら頑張って登った阿弥陀岳は格別でした。

本分にも書きましたが、衝撃的達成感でした。

「また行きたい!」と簡単に言えるほど楽には登れませんでしたが、もっとパワーアップしてまた挑みたいと思います。