こんにちは。
今日は南アルプス南部を縦走した2日目の記録です。
山行記録
8:00聖平小屋 ー 10:20聖岳 ー 12:40兎岳 ー 13:20小兎岳 ー 14:20中盛丸山 ー 15:20百間洞山の家
※この山行の準備についてと1日目の記録は過去記事をご覧ください。
超えるぜ聖
朝
2日目の朝はのんびり5:30頃起床。
前日は19:30に就寝したので、10時間たっぷり寝たことになります(笑)
もう少し寝たいなあという感じだったけれど…(まだ寝たいんかい)。
なんとか寝袋から這い出しました。
4:00頃一度目を覚ました時には止んでいた雨も、この時には予報通り土砂降りになっていました。
テント内でお湯を沸かして朝食をとり、荷物をまとめて出発の準備。
雨中キャンプでは、湿気や結露による水分で寝袋もろもろは湿ってしまう…わかってはいるけどテンション下がるなあ(´Д` )
雨の日の撤収は嫌いだ~。
それでも8:00前には撤収を済ませました。
言わずもがな、濡れたテントは重さ増し増しです。
小屋前の屋根のある場所で準備を整えていると、小屋の方が「今日はどこ行くの?」と話しかけてくださいました。
聖に行くことや、天気のことをお話しているうちに、小屋の方の「天気はこれから良くなりそうだけどね」という言葉の通り、徐々に雨脚が弱くなってきました。
小屋の方は、わたしがヒル忌避剤を靴にスプレーしているのを見て、「ヒルはもういないよ、この高度になると生きて行けないからね。便ヶ島の方にはいっぱいいるけどね~」と教えてくれました。
あら、良いこと聞いちゃった!ヒルいないってさ!!
その時左足にスプレーしていた忌避剤は、そっとザックにしまったのでした(笑)
聖平小屋から聖岳
さて、いよいよ聖岳に向かって出発。
電波の入る分岐(前回参照)を通り過ぎ、北へ向かってがんがん登ります。
実は…前を歩く師匠のザックには、わたしのテントも入っています。
わたしの疲労具合を見越して優しすぎる師匠が「テントとポール持つから頑張って」と励ましてくれたのでした。
もともと計画を立てている時点で歩ききれるか不安だったわたしに、「荷物重くて歩けなかったら持つから遠慮なく言ってね」と言ってくれていた師匠。
しかしそうは言っても自分の荷物は自分で持たないとと頑張ってはいたのですが…結果的にテントを持ってもらわなかったら、わたしは途中撤退していたと思います(ってくらいこの先の行程辛すぎた)。
「余裕ある人がカバーしないとパーティの意味がない」と言ってた師匠、やっぱ大尊敬ですわ。
「自分が余裕ある時に誰かが困ってたら助けてあげてね」と教えをいただいたので、わたしもみんなを助けられるハイカーになりたいと思いましたっ。
歩き始めて数十分で雨は止みました。
暑いのでレインパンツは脱いで、ガスの中ですが一生懸命登りました。
チラチラ見える山々はやっぱり大きい…。
気合が入ります。
木の間から一瞬見えたこれは聖岳でしょうか。
ひえ…だいぶ遠いですな(;^ω^)
木道が終わるとすぐに樹林帯に入ります。
土ではなく砂利の道です。
出発から1時間後、師匠が立ち止まって「コレ、ヒルじゃない?」と足元を指さしました。
恐る恐る見てみると…
※閲覧注意
で、でた~~~Hiru!!
しかもめちゃくちゃ長い!!
ヤマビル(?)初対面です!!!(※ヤマビルではなくコウガイビルの可能性あり)
見た目はミミズみたいですが、ミミズとは違って口の部分が吸盤になっているし、結構移動が速いのですぐにヒルだとわかりました。
…ん、ちょっと待てよ。
小屋の人は「この先はもうヒルいないよ~」とか言ってなかったっけ?(笑)
なんか、稜線上でも生きられるヒルが一部いるようです(笑)
こんなキモいやつに吸血されたら失神できるな…と思い、忌避剤をちゃんとスプレーしておけばよかったと後悔しましたが、幸いこれ以外ヒルに出会うことはありませんでした。
ヒル遭遇場所から数分で樹林帯を抜けました。
森林限界上は風がとても強く、突風にふらつくこともしばしば。
それでも、聖平小屋から約1時間半で小聖岳に到着しました。
銃撃でもされたのかと思うくらいぼろぼろの標識。
もはや何岳か読めません。
色々がぼろぼろなのって南アのブーム??
ご覧の通り景色は真っ白なので、休憩は入れず先に進みます。
笑えるほど風が強かったです。
気にすると恐怖心が出てきてしまうので、気にしないようにして聖岳を目指しました。
聖岳の登りはかなりの斜度。
雲の中にゆらゆらする山頂が遠くて遠くて心が折れそうでしたm(__)m
一歩が重くて、ずっと足元を見てしまいがち…。
ふと顔を上げた時、眼下にこ~んな雲海が広がっていると、嬉しさで涙が出そうになりますね!
Earth感じるう!
聖岳の神様がちょっとだけ微笑んでくれた瞬間でした。
岩が転がり落ちてきそうな急斜面を一歩ずつ歩きます。
テントを持ってもらってるくせにめちゃくちゃきつくてしんどかった~:;(∩´﹏`∩);:
自分の体力のなさに絶望しました。
カメの歩みながら、なんとかなんとか聖岳登頂です!!!
◆聖岳(ひじりだけ)について
標高:3,013m
3,000m級としては南ア最南端に位置しています。
南東に流れる聖沢が肘を曲げたような形だということから「ひじ折る」や、沢に悪場が多く「へずり」(沢の両側の岩稜帯をトラバースすること)が多いということから、転嫁して山名になったと言われています。(諸説あり)
参考:
山頂は360度真っ白で展望はありませんでした。
晴れていれば絶景大パノラマが広がるみたいですよう!
3,000m峰としてはわたし史上3座目の登頂でした。
(ほか2座は富士山と槍ヶ岳。)
景色はなかったものの、達成感はとても大きかったです!
山頂の石の上に腰掛け、しばらく嬉しさに浸りました。
聖岳は峻険というより大きくどっしりとした山容だと思っていましたが、Wikiによると西壁は巨大なバットレス状になっているみたいで、登攀の対象になっているようです。
登攀のイメージが無かったのでなんだか新鮮!
聖登攀をやる人は、きっとクライマーの中でも玄人なんだろうな(笑)
聖岳から兎岳
聖岳で長めの休憩をとったおかげで少し回復。
次なるピーク兎岳を目指します。
途中、ハイマツの中にハクサンイチゲを発見しました。
雨に濡れて花びらが少し透けています。
師匠によると、濡れると透明になる個体があるらしい。
まるでサンカヨウみたいですね(/・ω・)/
兎岳のコルまでがんがんがんがん下ります。
せっかくのぼったのに!という、縦走お決まりの文句が口の中でもごもご。
途中ペンキで塗ったかのような赤々とした岩石がごろごろしている個所がありました。
これは赤色チャートと呼ばれる石らしいです。
◆チャートとは
生物起源のものと、非生物起源のものがあります。
生物起源のものは、シリカ(二酸化ケイ素)の殻をもつプランクトンの死骸が海底に降り積もり、長い年月をかけてできました。
比生物起源のものは、水中での熱活動に伴って放出されたシリカが積もったものです。
固いことが特徴で、灰色・茶色・緑色・褐色・黒色と様々な色があります。
参考:
聖岳のチャートは赤色なので、酸化鉄鋼物を含んでいるようです。
手に取ってじっくり見たらより面白かったと思うのですけど、疲労でそんな余裕はなかったので、「赤いね~、こっちが赤石岳って名前の方が良いんじゃない?」という無駄な会話をしながら通り過ぎました。
コルからは再びきつい登り返しが待っていました。
「兎岳」って、名前から言って丘的な、こう、ゆるやか~なピークだろうなって想像してたんですけど、それはもう聖に引けを取らないくらいの登りでびっくりしました(地図を見ろ)。
一歩一歩が重くて、前を行く師匠を何度待たせたかわかりません。
…師匠、本当にわたしのテント持ってます?(しかも濡れて重いヤツ。)
「冬山のテント泊に比べたら軽いよ~」なんて言ってましたが(まあそれはその通りなんだろうけども)、やっぱハイカーとしての格が違うなと思いました。
くう!
兎岳避難小屋付近で休憩をとりました。
避難小屋は登山道から少し外れたハイマツ帯にあります。
わたしたちは見に行ってないですが、話に聞くところ最近までは相当なぼろ小屋だったみたいです。
この後宿泊した百間洞山の家に「兎岳避難小屋の修復の様子」が貼ってあったので、現在はずいぶん綺麗になっているようですよ!#たぶん
避難小屋から程なくして兎岳山頂に到着しました。
あんなにガスってたのに山頂についたとたん青空が見えるというミラクル。
南アの神様は我々に微笑みかけているようだ!!
ふわふわと漂う霧で、近くの尾根尾根は見え隠れ。
なんとも幻想的な景観でした。
兎岳から中盛丸山
兎岳から小兎岳とのコルまで下ります。
その後に小兎岳に登り返し。
アップダウンが激しい…そろそろあったかいおふとんに入ってスヤヤになりたいな…なんてぼ~っと幻想を抱きながら足だけは動かします…(笑)
先に小兎岳南峰を踏み、次に小兎岳に登頂しました。
相変わらず霧展望なので先に進みませう。
小兎岳の下りにはナナカマドが咲いていて、少し元気をもらいました。
秋には紅葉が素敵でしょうな!
この下りもなかなかの斜度。
ガスと強風でため息が出そうなところに、一瞬雲が抜けて目の前に巨大な山が姿を現したので、師匠と思わず声を上げました。
…………えーーっと。
聖・兎・小兎の後にコレ登るん?(笑)
信じられなくて地図を確認しましたが、どうやら嘘ではなく、これが次なるピーク中盛丸山らしいです。
でかすぎて引いた。
申し訳ないけど、登るのが心底嫌でしばらく現実を受け止められませんでした(笑)
しかし引き返すにしても兎・聖を越えなければなりませんので…行くしかないか…。
あ!中盛丸山が現れた!▼
▶たたかう
にげる
HEY ヘリ
(てれれれれれ(ポケモンのBGM))
…登り返しの前に森林限界下に下らせられて(すでに)HP10。
中盛丸山の岩場激登攻撃でHP1。
じょうたい/ひんし でなんとか到着。
きつすぎて笑っちゃいました(笑)
我ながら頑張った~~!
ジムバッジもらっても良いと思う!✦
中盛丸山から百間洞山の家
中盛丸山から再びコルへ下ると、ようやく百間洞(ひゃっけんぼら)の標識が現れました。
「あと1kmもあるの~」という大ブーイングは飲み込み(笑)、ここからはトラバース道をひたすら下ります。
標識からすぐにダケカンバの樹林に入りました。
足場は良いとは言えないので、疲労の蓄積した足で歩くのは大変でした。
はやる気持ちを抑えながら、こけないように慎重に下ります。
高度を下げたことで雲の下に来たらしく、開けたところからはこの日登ってきた聖岳の姿を確認することができました。
あそこから歩いてきたんだ…そう考えると、人間の足ってすごいなあと思います。
千里の道も一歩からだね!
標識から20分ほどで眼下に百間洞山の家の屋根が見えました。
しかし見えてからが地味に遠く、相変わらずの急坂をまだかまだかと必死の思いで下りました。
だいぶ近づいてきた!
お布団はよ~。
沢を渡って少し歩くと、森の中にようやく小屋がありました!
助かった~という感じ(笑)
お疲れ様でした!
百間洞山の家
受付
ザック置き場にザックを下ろし、宿泊受付のため中に入りました。
◆百間洞山の家について
赤石岳と聖岳の中間点に位置する、地形を活かした3階建ての山小屋です。
1992年に建てられました。
名物は作り立てのとんかつで、小屋泊者にのみ夜ご飯として提供されます。
<基本情報>
収容人数:30名前後
開設期間:7月中旬~9月下旬
素泊まり:¥10,000/人
テント泊:¥2,000/人
テント設営数:約20張
参考:
宿泊用紙に記入をしていると、小屋のお兄さんが「ずいぶんお若いですね!」と話しかけてくださいました。
「ここは元気なおじいちゃんおばあちゃんしか来ないから、若い方がいらっしゃると少し嬉しいです!(笑) 若い方はみんな華やかな北アルプスとかに行っちゃうんですよ~」と仰るので、なんだかおかしくて笑ってしまいました(笑)
お兄さんによると、今シーズンで20代の宿泊はわたしたちが初めてとのこと。
確かにこの2日間、同年代の方にはまったく会わなかったです(そもそも人があまりいない(笑))。
少し寂しい気もしますが、出会う方は皆さん例外なく山に詳しい玄人ハイカーさんなので、お話していて楽しいし勉強になるなあと感じます!
ちなみに受付は兼売店となっていて、バッチや手ぬぐいなどのグッズのほか、各種飲み物・おやつ類からカロリーメイトやアミノバイタルまで売っていました。
飲み物は南アの天然水でキンキンに冷えていました。
「部屋で落ち着いた後に買いに来よう」と後回しにしたら、結局買わずに終わってしまったので少し心残りです(笑)
前日の聖平小屋もそうでしたが、ここ数日は悪天候の影響でヘリによる荷上げができておらず、売店は品薄状態のようでした。
山深い場所ですので、ヘリが飛ばないというのはダメージが大きいですよね。
余談ですが、今回立ち寄った山小屋では、毎回必ず「グッズいっぱい買ってね!」とグッズの購入をお願いされました(もちろん押し売りとかではなく、フレンドリーな感じで(笑))。
北アなどではまずない、小屋のスタッフさんとお客さんの距離が近いからこそのコミュニケーションだと感じました。
アーバンな北アとは対照的で、南アはまだルーラル感たっぷりですっごく素敵!!
グッズを買うことで小屋にも貢献できると考えると、いっぱい購入したくなります:;(∩´﹏`∩);:
お部屋
お部屋があるのは小屋の3階です。
外階段を上がったところに入口があり、靴を脱いで入ります。
今回はD-1番。
寝る場所は2段になっていましたが、この日の宿泊者は我々含め6人だけだったので(すっくな!)、2段目は進入禁止になっていました。
お部屋は3人用。
この日はそのスペースを2人で広々使うことができました。
1人1セットの寝袋と布団が用意されており、頭側にコロナ対策の仕切り板が設置されていました。
仕切り板のおかげで、寝転がれば半個室。
窓からは中盛丸山方面が見えました。
残念だったのは、それぞれのお部屋にカーテンが用意されていないということ。
物干し用の細引きが張ってあるので、そこにジャケットや手ぬぐいを干してなんとなく目隠しにはなるのですが、やはり着替えをするとなると厳しいです。
スタッフさん含め宿泊者はわたし以外全員男性だったので、着替えにはトイレを利用することにしました。
トイレ・水場
トイレと水場は1階にあります。
トイレの個室は3つほど。
一番奥は、なんと女性専用になっていました。
予想外のお気遣いですごく嬉しかったです(*'ω'*)
聖平小屋のような水洗ではありませんが、清掃が行き届いており清潔感がありました。
水場はトイレの反対側にあります。
こちらも蛇口をひねると出てくる南アの天然水。
とても美味しかったです。
トイレと水場の間に自炊場がありました。
小屋泊者のみ使用可能です。
夜ご飯
着替えを済ませてお部屋で翌日の準備をしていると、夜ご飯ができたアナウンスがあったのでみんなで食堂に集合しました。
そんなに広くないですが、木目の綺麗な明るい食堂です。
好きな席を選べるとのことだったので、窓際の席に座りました。
アクリル板が立ててあってコロナ禍でも安心です。
そしてそして、お待ちかねの名物とんかつはこちら!!
拍手喝采!!!
この日はこのために長い行程を頑張ったと言っても過言ではありません。
すごく楽しみだったとんかつ♡
揚げたてで温かく、とっても美味しかったです(*'ω'*)
そばやみそ汁に生野菜、フルーツまでついていてボリュームも満点。
お腹も心も満たされました✿
ご馳走様でした!
わたしは食べるのが遅いので下膳が最後になってしまったのですが(てかみんなが早すぎるんだわ…)、スタッフさんが笑顔で対応してくれてありがたかったです、ごめんなさいでした(/_;)
夜
歯を磨いた後は、お部屋で師匠と紙地図を眺めながら翌日の行程を確認しました。
天気が悪かった時のことも考え、エスケープ道の赤石岳東尾根(大倉尾根)も確認。
心身ともに疲れていて、ついついエスケープのことばかりが頭をよぎります。
(でも翌日は、そんな心配吹っ飛ぶくらいの大快晴になったのである(笑))
それから、2日間で撮った写真を見返しながら、大変だった行程を2人で振り返りました。
あんなにきつかった中盛丸山の登りもこの時にはすでに笑い話になっていました(笑)
辛さを共有できるパーティってめっちゃいいな!!
就寝は20:00くらいだったと思います。
久しぶりの山小屋泊だったので寝付けるか不安でしたが、疲れ切っていたからかスンって感じで一瞬で眠りに落ちました(笑)
夜、暑さと乾燥で何回か起きた以外はしっかり眠ることができました。
※暑くて起きる小屋泊あるある。
さて次回は3日目の記録。
快晴の赤石岳・荒川三山を歩きましたよ〜!!