こんにちは。
今日は大天井岳に登った記録です(*'▽')
※激長文です、適宜飛ばしてください、短編小説だと思って読んでください。(笑)
大天井岳について
大天井岳(おてんしょうだけ)は長野県大町市・安曇野市・松本市にまたがる標高2922mの山です。
山体は燕岳と同様花崗岩からなり、山頂部を岩塊が埋め尽くしています。
「だいてんじょうだけ」「おおてんじょうだけ」とも呼ばれていて、山名は御天井や御天所からきています。
これは「二ノ俣を詰めた最高所」という意味だそうです。
参考:
大天井岳 - だいてんじょうだけ、おてんしょうだけ:標高2,922m-北アルプス・御嶽山:北アルプス南部 - Yamakei Online / 山と溪谷社
山行記録
5:00 中房温泉第二駐車場 5:10 ー 5:20 中房温泉 5:25 ー 8:00 合戦小屋 8:15 ー 9:05 燕山荘 9:15 ー 10:10 大下りの頭 ー 12:20 大天荘
憧れの喜作新道を行く
もともと表銀座経由で槍に登る予定だった8月の最終週ですが、秋雨前線の影響で天気が崩れたため予定を変更し涸沢から穂高に登る計画を立てました。
しかしそれも悪天候で上高地止まりとなり、結局槍にも穂高にも登れなかったわけです。
それで本来なら山にこもっているはずの土日もフリーになり、悔しいので父とどこか1泊で登ろうということになりました。
今年買ったヘルメットを使いたかったので最初は五竜に行こうとしたのですが、テン場の争奪戦がすごいという情報があってちょっと行くのをためらいました。
で、父の提案で大天井岳に登ることになりました。
大天井を目的地とする山行ってなかなか珍しいんじゃないかな(笑)
大天井なら今年歩くはずだった喜作新道もちょっと歩けるので、文句なしで出かけました。
中房温泉から燕山荘
今回の山行の起点は中房温泉。
ここはあの人気な燕岳の登山口でもあるので、いつも混雑する駐車場に行くときは緊張します。
麓の、くねくねの山道の入り口には警備員さんらしき人が立っていて、「第一駐車場は満車なので第二駐車場にとめてください」と言われました。
朝の4時台なのにもう満車なのかよ。
えれえこった。
5:00に第二駐車場に到着しました。
第二は4,5台しかとまってなかったので気楽に駐車できました。
両側の車はどうやら車中泊勢らしく、おじさんが寝てました。(笑)
ちゃちゃっと準備を済ませて早々に出発。
大天井まで歩くのですが、わたしの体力ではコースタイム通りいくか心配で早め早めで行動しました('Д')
駐車場からはコンクリを歩かなければならないので面倒くさいです。(笑)
登山口の中房温泉にはもうたくさんの人が集まっていました。
ああ…燕ってめちゃ良い山だけどすごい混んでるから本当に嫌だ…。
合戦尾根も人が大量だから嫌いだ……などと思いながら…出発(笑)
ちなみに中房温泉は新田次郎の『孤高の人』で加藤文太郎が粗末な服装を笑われたところです。
加藤は自分の服装を見た。地下たびを履き、着古したズボンにゲートルを巻き、上衣は、いつも山へ着ていくカーキ色の作業着である。テントの中の男たちが笑った理由が、加藤の貧弱な服装にあったとしてもそのことは、加藤にとって、問題にすることではなかった。ただ加藤は、同じく、日本アルプスという山を目指して来ている山の仲間に、お前なんかここへ来る人種ではないぞと、いわんばかりにそっぽを向かれたことがたいへん悲しく思われてならなかった。
唐突の孤高の人失礼(笑)
『孤高の人』も加藤文太郎も大好きなので、どうしてもこの山行は物語と重ね合わせてしまいます。
ちなみに加藤の表銀座縦走は、『孤高の人』では彼の初めての北ア旅となっています(史実とは違いますが)。
今回は『孤高の人』のストーリーを思い出しながら楽しんで登りました。
懐かしい登山口。
初めて来たのは2年前でした。
(燕岳と合戦尾根についてはこっちの方が詳しく書いてあるので参考にしてください。)
この時も人の多さにだいぶやられた気がする。(笑)
合戦尾根は30分くらいの間隔でベンチが用意されていて、良い感じに呼吸を整えながら登ることができます。
北ア三大急登と言われていますが、休憩がしやすく歩きやすい道なので急登といった印象はあまりありません。
父が「なんで笠新道が入ってなくてここが三大急登の1つなんだ」とボソッと言ってた。
1泊とはいえテン泊装備なのでゆっくり登りました。
日帰りの軽そうな荷物の人たちにどんどん抜かされて、こんにゃろぅと思って頑張りました(笑)
曇っていた空も次第に晴れてきて、太陽の木漏れ日が光芒となって霧の樹林帯を照らしていてとても素敵でした。
有明山も見えました。
合戦尾根は登るごとに有明山が低くなっていくのがわかるので面白いです(*'▽')
木の根を踏みこえるごとに面白いように高度をかせぎ取りながら、木のしげみの間から中房渓谷をへだてて反対側にそそり立っている山と対比して彼のかせぎ取っている高度を確かめた。谷をへだてて、自分の高度が間接的に判断できるということが、彼の過去の経験に全然なかったとはいえないけれど、いま彼が自らの足と眼で、原生林の中で発見しつつある一つの登山の法則は見事なくらいあざやかに実証されていて、ひどく彼の心をたかぶらせるものであった。
途中から日帰り装備の大学生っぽいグループと一緒になったのですが、最後尾の男の子がお腹が痛いと言って1人下っていきました。
かわいそうに…。
疲れた、早く合戦小屋でしもっぱらスイカ食べたいと思い始めた頃、あと10分の看板が出てきました。
うぇ~いがんばります~。
途中のひらけた場所から大天井が見えそうで…
見えなかった。
ちぇっ。
この日は朝からヘリの音がずーっと鳴り響いていて、誰か遭難でもしたのかなあと思っていましたが、どうやら荷上げ日のようでした。
ハイリスクローリターンの、ヘリによる山小屋への物資運び。
北アのヘリ問題は深刻なようですね。
さて、歩みを進めると合戦小屋に到着しました。
いやほんとに懐かしい。
名物のスイカをいただきました。
(写真撮る前に父がかじった。)
安定の味でした。
最近山登りで生のフルーツを重宝しているのですが、スイカは水分がたっぷりなので喉の渇きを潤してくれます、最高。
合戦小屋も荷上げとゴミを下ろす日だったらしく、スタッフの方に「ヘリが来るので気を付けてくださいね」と言われました。
ヘリを間近で見るの楽しみにしていたのですが、なかなかやってこないのでしびれを切らして出発することに(笑)
残念だけど先を急ぐので…。
燕山荘まではあと少しだ!頑張ろう( ˘ω˘ )
道がだいぶ開けてくると、向こうの尾根に大天井岳を見つけました。
きゃ~~、あれをこれから登りに行くのか~~!
手強そう(笑)
ザレザレとした花崗岩のひらけた道が相変わらず懐かしかったのでわくわくして登りました(/・ω・)/
そしてこの空の青さ。
この夏久しぶりにthe青空を拝めた気がするよ。
霧は間もなく彼を解放した。そして、霧は二度と来る様子もなく、頭上には紺色の空があった。加藤はその空の色に日本海を思った。故郷の浜坂の城山で見た日本海の色が、ここで見る空の色だった。故郷で見た空の色も神戸で見ている空の色もこのように澄んではいなかった。(中略) ここで見る空の青さは、むしろ黒色に近い感覚で読み取られた。白くとけこんだ、水蒸気のやさしさはなく、暗黒の宇宙へつづくきびしさだけが感じられた。
さらに燕山荘も見えました。
そういえばあの直下の階段地獄がつらかったんだっけなあ。
鎖がいらない鎖場。
そしてここで槍ヶ岳様の御成り。
ひ~、今年こそは行けるはずだったのに…くやしいい!(笑)
最後の階段を登り切ってようやく燕山荘に到着しました。
下からずっと一緒だった大学生らしき集団は、燕山荘前の絶景を見に大はしゃぎで走っていきました。
小学生かい(笑)
燕山荘前の景色どん。
嗚呼美しきかな裏銀座……。
去年あそこをずっと縦走した実感がわかないのはなぜだろう(天気悪くて何も見えんかったからだろう)。
烏帽子岳。
ブナ立がつらかった。
強風がまじで怖かった。
水晶岳。
爆風と大雨で死ぬかと思った、そもそも山頂登ってない。
鷲羽岳。
山頂登ってない、疲労困憊だった。
槍ヶ岳。
たどり着く前に力尽きた。
どう考えてもご愁傷様な旅でしたね、ウケる。
あ、それから燕岳もとってもきれいに見えていました(*'ω'*)
北アルプスの女王っていう呼び名、ぴったりだよね。
山荘の前でちょっと休憩しました。
(右奥の知らない人が写真撮ってくれてるみたいになっててじわる。)
燕山荘から大天荘
休憩後、いよいよ大天井に向けて出発。
憧れの表銀座縦走路、喜作新道を歩けるというわくわくで言葉に表せない気持ちになりました。
そしてこの絶景。
稜線がずーっと槍まで続いています。
何だこれ!!すごすぎる!!!!
美しすぎて泣けてくる…(笑)
槍がかっこよすぎて号泣。
絶景に息をのみながらの快適な尾根歩きがついに始まりました!
とりあえず槍がやばいのでぼかぼかに写真を載せておきます(笑)(笑)
歩けば歩くだけ大きくなる槍が面白かった。
大天井岳もずっと見えています。
まだまだ遠いな…。
途中蛙岩の中を歩きました。
鞭をふるような雷鳴を聞いたのは、蛙岩をすぐ眼の前にしてからだった。ぴゅうんぴゅうんと山が鳴った。空気が鳴り、尾根が鳴り、彼自身も鳴った。雷光と雷鳴はほとんど同時だった。彼は這松の中に這いつくばって、天の声を聞き、天の鞭を受けながら、天の火を見た。(中略) 加藤の不敵な顔を雷光が照らした。彼の眼は正しく蛙岩の方向を睨んでいた。
めっちゃテンション上がる!!!
でもどの辺が蛙なのかちょっとよくわかりませんでした(汗)
蛙岩を抜けると一層大天井が大きくなってきました。
やばいな…こんな絶景見せてもらっちゃって良いんですか…。
マイブームのたていちでも。
天国や。
頭上をものすごい速さでヘリが飛んでいきました。
大天井を越えてどこかへ行ってしまいました、どこに行くのかな。
大下りの頭直前には大天井を展望できるちょっとした広場がありました。
大天井でかすぎない?
あ、そういえばこの山行では32ℓのザックを使っていました。
テントは帰りのポール以外父が持ってくれたので、2日分の食料と装備のみが詰まっています。
防寒着やシュラフカバーがかさばるせいでかなり頑張ってパッキングする羽目になりましたが、一眼レフを入れるスペースもできるくらいちゃんとできました。
ザックはなるべくコンパクトにすっきりさせたいので、32ℓにおさまったのは大満足です(笑)
大下りの頭に到着。
ここから悲しくなるほど下り、悲しくなるほど登り返さなければなりません。
足にきます(;^ω^)
帰りに疲れてるところでこれを登るのが辛そうだ。
東斜面で森の中に入ったりするので展望はききませんが猿にあいました。
かなりの集団。
ちょっと怖いです(; ・`д・´)
振り返って下りてきた斜面を望む。
そしてここから数回斜面を登り下りしました。
東斜面は無風で暑いくらいですが、西斜面に出ると途端に西風が吹き付けてきて寒くなります。
レイヤリングがむずい。
展望のきかない道をしばらく歩き(この辺が結構きつかった)、ぽんっと再び尾根に出ると、大天井がまた一段と大きくなっていました。
頑張るぞ~(=゚ω゚)ノ
ここから喜作レリーフまでの道が本当に本当に快適でした。
起伏のない尾根歩き最高。
途中1か所だけ鎖とハシゴがあります。
鎖を下ると右手に喜作レリーフがあるので見落とし注意。
喜作新道は、北アルプスの名猟師と呼ばれた小林喜作が1920年ごろに切り開いた道です。
喜作があたかも銀座を歩くかのように歩いたことから、「北アルプスの表銀座」と呼ばれる人気道になりました。
表銀座に「喜作新道」を開いた 小林喜作|安曇野市ゆかりの先人たち - 安曇野市公式ホームページ
喜作になり切って歩いたけど足どり重すぎて到底及ばなかった。
階段と斜面を登ると分岐に出ます。
まっすぐ行くと大天井ヒュッテ、左に行くと今回の目的地である大天荘と大天井岳山頂に至ります。
振り返ると今まで歩いてきた道が続いていました。
よく頑張った自分。(笑)
さて問題なのはこの分岐からの登り坂です。
あともうちょっとという気持ちがどうしても高まってしまうので、CT40分のこの坂はとても長く感じられます。
それに目的の大天荘が全く見えないので、まだ?まだ?とどんどん疲労します(笑)
それから、西風が斜面によって若干さえぎられて、太陽がカンカンに照り付けてくるので暑いです。
最後の最後にこれは鬼畜(笑)
休憩を入れながらゆっくり登る( ˘ω˘ )
ぐるっと道が回り込んだところでやっと大天荘の屋根が見えました!!
大天荘到着です✦
白い窓枠が素敵な山小屋ですね!!
◆大天荘(だいてんそう)について
槍ヶ岳と常念岳の分岐であり、北ア屈指のビューポイントに立つ山小屋です。
1956年に建設されました。
現在は有明荘、ヒュッテ大槍、合戦小屋、燕山荘とともに燕山荘グループに入っています。
昼食のインディアン・ランチが名物で、1500円でキーマカレーかグリーンカレーかチキンカレーを選んで食べることができます。
テン泊の受付をしに中に入りました~~。
めっちゃおしゃれでした~あ(笑)
テント設営&ランチ
大天井岳山頂に行く前にテントを設営してお昼を食べました。
まずはテント設営。
朝の出発が早かったのとコースタイムをちょっと巻いて歩いてきたためか、テン場には1番乗りで到着し、サイトは選び放題でした。
西風をまともに受けるけど槍穂高の展望が抜群のところか、風の影響は少ないけど槍穂高があまり良く見えないところかで結構悩みましたが、最終的に絶景には負けて強風のサイトに張りました(笑)
やばいでしょこの展望。
でもほんとに風が強かったので張るのに頭を使いました。
そういえば何かの本で強風下のテント設営はうんたらかんたら~~~って書いてあったなあなどとあいまいな記憶を掘り起こしながら、風上からペグを打っていきました。
石やザックをテントの中に入れて重石にし、四角を固定してからポールを入れました。
わたしはこの順序での設営は初めてだったけど、あとで調べたらあってたみたい。
その後フライシートをかぶせて本体とジョイントしましたが、ペグを外さなくてもひっかけられたので手間がなくて良かったです。
アライテント最高。
参考までに↓
強風や雨のときはどうする? 悪天候の山岳テント設営と撤収の仕方 - 登山初心者.com
完成✦
石が地面にたくさん埋まっていたのでペグが刺さりにくかったです。
なんとか深く刺して、その上からさらに大きな石を乗せて固定しました。
寝ている間に吹っ飛ばされませんように。(笑)
やれやれ、30分近くもかかったぜ。
遅すぎたので強風下のテント設営は今後の課題ですな…。
はあ、1人じゃなくて良かった~~~。
わたしたちよりちょっと後に来て設営を始めたソロテンのお兄さんはだいぶ苦労して張っておられました。
手伝ってあげたくなった。(; ・`д・´)
でもさすがにおせっかいすぎるので黙ってランチに向かいました。
実は昼食はコンビニで買ったおにぎりになるはずだったのですが、早朝に買ったやつを車に忘れて来ちゃったんですよね(汗)
それに気づいたのが登山開始してちょっと経った頃で、もう戻るのだるいから頑張って歩いて大天荘のランチ(13:45まで)に間に合わそうということになったのでした(笑)
わたしの足じゃ絶対間に合わないと思ってたけど、テント設営した後でも余裕だったのでわたし結構体力ついたんだと自負した(調子に乗りやすい)。
それはそうと山小屋のご飯とかテンション上がりまくるな!!!
ランチは玄関の受付で注文し、奥の食堂で食べるというスタイルでした。
食堂が綺麗でギョッとなりました(笑)
窓の外に広がる絶景を眺めながらの食事です。
幸せすぎて泣ける。
席に着いてからしばらくして料理が運ばれてきました。
もちろんインディアン・ランチです(∩´∀`)∩
わたしはグリーンカレー、父はチキンカレーを頼みました。
かわいすぎるお姉さんが運んできてくれて嬉しかった(オヤジか)。
カレーめっちゃおいしかったです。
サフランライスもナンもカレーと相性抜群だし、チャイとフルーツポンチが泣けるほどおいしかった(泣)
(今日泣いてばっかやん(笑))
食堂はわたしたちで貸し切り状態だったのでそれもまた幸せでした。
スタッフルームの方に向かって「うまい!(宮川大輔風)」って言ってみたけど多分聞こえてない。(聞こえてたら恥。)
ごちそうさまでした!!!
大天荘から大天井岳
満腹になったわたしたちはいよいよ大天井岳山頂に向かいました。
山頂への登山道は山荘の裏に続いています。
ザックを置いたので超身軽です\(^o^)/
(父はぜえぜえ言ってた、今回はテント持たせてすまなかったと思ってる。)
お疲れとーちゃん。
安定のモンベルおじさん(笑)
奥には常念岳が見えていました。
安曇野市が見えました。
晴れたね!!
今日歩いてきた道。
燕山荘と燕岳もはっきりと望めました。
そしてついに山頂にたどり着きました✦
2922m(=゚ω゚)ノいぇ~い!
ちなみに日本で30番目に高い山らしいです。
西風のせいでジャケットが丸太みたいになってる図。
たくさん撮っていただいたおばさまありがとうございました(*'▽')
槍ヶ岳ベストスポットに腰を掛け、強風で鼻水と涙流しながらしばらく槍を眺めました(笑)
手前の尾根は表銀座縦走路です。
実はこんなに近くで槍を見たのは初めてだったのでものすごく感動しました。
ネクタイのようなY字雪渓、なんてかっこいいんだ!!
左手前から槍に伸びる尾根は東鎌尾根ですが、秋雨前線さえ来なければここを歩いていたのにと思うと悔しいですね(笑)
そして右側に伸びるのは北鎌尾根です。
槍の偉大さを支えるものは、そこから見て、北と南に張り出している尾根であった。その中でも、北鎌尾根こそ、槍のいただきにせまるもっとも、厳粛な尾根に見えた。北鎌尾根こそ、槍の存在を価値づけるものであり、北鎌尾根を無視したら、槍はないも同然に考えられた。
加藤文太郎は、槍ヶ岳から、北鎌尾根へ、そして北鎌尾根から槍ヶ岳へと、なんどか眼を動かした。
「どちらでもいいのだ」
と加藤はいった。
北鎌尾根をたどって槍の頂上へいってもいいし、槍の頂上から、北鎌尾根へ下ってもいいのだ。
要するに、槍と北鎌尾根と離しては考えられないのだ。
「いつか、おれは北鎌尾根をやるぞ」
加藤は山に向かっていった。
その誓は絶対のもののように思われた。彼はその美しく偉大なものとの対面に、過ぎていく時間を忘れ果てていた。
これは『孤高の人』で加藤文太郎が大天井岳から槍を望んだ時の描写です。
加藤文太郎の気持ちわかるなあ…。
こんなかっこいいの見せられたら、軽率に北鎌行きたいと思ってしまうなあ…(行けないけど)。
視界いっぱいに広がる裏銀座の山々。
パノラマ撮影。
疲れた父、槍を背にして座る。
遠くからやってきたヘリがあっという間に尾根を越えていきました。
ほんとに今日はヘリばっかり。
30分ほど滞在してから山頂を後にしました。
常念山脈の稜線もなかなかの最高具合。
風は強いですがこんな絶景を拝めて昇天しました。(笑)
テントでまったり時間
山頂を下りて中天井の方へちょっとお散歩した後、テントでぐだぐだしました。
あ、中天井方面の眺めもなかなかに最高でしたよ(*´ω`)
常念岳ね、懐かしい。
帰ってくるときに見た自分たちのテントのぽつんと感がツボ。
そのぽつんとテントから槍をチラ見。
見たくなったらいつでも見れます(笑)
父が寝てしまったのでわたしは1人風に吹かれながら槍を1時間ほど眺めていました。
眺めながら写真を撮ったのですが、今見返してみるとひたすらに北鎌と槍の写真です(笑)
何度撮っても変わらんのに…。
北鎌尾根は加藤文太郎と松濤明の最期の地でもあります。
加藤はなにか背後で起こったような気がした。ふりかえったとき彼は、吹雪ではない、雪煙の中に、あおむけになって倒れこんでいく宮村の姿を見た、加藤はすぐザイルを肩がらみして確保する用意をした。ザイルの重さがぐんと彼の肩にかかったとき、彼がふんばっている足元の雪がたわいなく崩れていくのを見た。次の瞬間、加藤は雪煙の中に巻き込まれていた。
1月6日 フーセツ
全身硬マッテ力ナシ. 何トカ湯俣迄ト思フモ有元ヲ捨テルニシノビズ、死ヲ決ス
オカアサン
アナタノヤサシサニ タダカンシャ.
一アシ先ニオトウサンノ所ヘ行キマス。
何ノコーヨウモ出来ズ死ヌルツミヲオユルシ下サイ.
ツヨク生キテ下サイ.
(松濤明 (2010).新編 風雪のビヴァーク 山と渓谷社)
松濤明の『風雪のビヴァーク』は最近買って、いま読んでるところです。
手記として書かれているのと、最期の北鎌で手帳に書いた遺書がのっているので、その壮絶さにぐっとくるものがあります。
ちなみに松濤明の手帳は大町山岳博物館に展示されています。
このえげつなく険しい北鎌尾根に魅了された2人の登山家の気持ちが、実際尾根を目の前にするとなんだかわかるような気がしました。
しばらくすると雲に覆われていた奥穂も姿を現しました。
涸沢カールめ!!!
昨日天気予報さえよければ今頃あそこにいたのに!!!!(笑)
起きてきた父とテン場から少し下った場所で槍を眺めました。
なんのひねりもないつまらんポーズをしてはしゃいでるのはわたしです。
すいません、楽しかった。
空が焼けるのを見た
槍を眺めた後、風のせいでとても冷えたのでテントに戻り、夕食の準備をしました。
暖かいお茶を飲んでいるとだんだん体も温まりましたが、外の気温がぐんぐん下がっていくのがテントの中でもわかったので驚きました。
18:30頃唐突に空の様子が気になり、テントのベンチレーション窓から空を見上げると、ピンクに染まっているのがわかりました。
夕食そっちのけで慌てて外に飛び出す(笑)
ほんのりと色づいた夕焼け空。
それもやがて濃度が増し、常念までの稜線はアーベントロートに。
そして西の空は燃えるようなオレンジになっていました。
美しすぎて、そして寒すぎてまた泣けた。
ありがとう槍ヶ岳。
(暗すぎて画質が限界に近い。)
だんだんと焼ける色が消えていき、北アルプスに夜が来ました。
夜
夕焼けを見た後は寒くて急ぎ足でテントの中へ。
夜ご飯はカレーでした、\また/ (笑)
もともと昼食にカレーを食べる予定がなかったのでね(笑)
まあカレーならいくら食べても飽きないから良いの。
父がアーモンドフィッシュ食べる?って差し出してきたんですが、
いらないと答えたら「加藤文太郎も行動食として食べてた小魚だよ」と言われ、断れなくなって食べました。
加藤文太郎は殺し文句。
夜、気温が下がるとともに威力を増す風を気にしながら寝袋にもぐりこみました。
標高2900mの稜線でテントを張るのは初めてでしたが、絶対寒いと思って防寒着は結構持ってきていたつもりでした。
上はダウンベストとフリースとレインウェアを着込み、下はロングのトレッキングパンツの上からまたレインウェアを履き、靴下は2重履きにし、そしてシュラフには薄いシュラフカバーをかけました。
それでも!!
尚!!!!!
寒い!!!!
侮るなかれ西風を。
テントのあらゆる隙間という隙間から風が入ってくるんです。
風がなければ快適に寝られる気温でしたが、風のせいで体感気温がとても下がりました。
その風も時間が進むにつれて強くなり、夜中にはポールが折れるんじゃないかと思うほどの風が吹きました。
まあポールが折れたとてつぶれたテントで朝を待てば良いだけなのでそこまで気にはなりませんでしたが、とにかく寒さは最大の睡眠妨害でした。
トイレに行きたくなったけど、もう外に出る気も失せるくらいの爆風だったので、ひたすらシュラフの中で縮こまっていました(笑)
1日が終わると思ったら眠れない夜が始まったわけです。
テントは果たして大丈夫だったのか!?
眠れないわたしたちの行方は!?!?
次回に乞うご期待!!
(こういう終わり方めっちゃやってみたかった。)
反省
ホッカイロ持って行けばよかったと猛反省しています…。
いつもは持っていたのですが、今回はなぜか眼中になくて寒い一夜を過ごす羽目になりました。
夜中の寒さは特に背中と足先が酷かったです。
でもなんであんなに着込んでたのに寒く感じたのか不思議…気温自体は一桁台だったはずなのに。
風は思わぬ被害をもたらしてくれました(;´Д`)
8月終わりの山はもう秋なので、防寒対策は初冬の山に行くくらいの気持ちでやらなければと思いました。
感想
最と高に尽きる。
1番良かったのはやはり槍ヶ岳でした。
今まで槍のこと「"みんな"が大好きな槍ヶ岳」とちょっとだけ倦厭、というか、「別にそこまでじゃないし~」みたいな感じだったのですが(どうしてそんなにひねくれてるんだ)、北鎌と槍を見た瞬間にもう槍のこと大好きになりました(笑)(笑)
北鎌いつか行きたい(たぶん来世)。
表銀座はもちろん景色も素晴らしいのですが、何より先人のストーリーが詰まっている素敵な素敵な縦走路なので、そのストーリーを思い出しながら歩くのがとても楽しかったです。
旅は何でもストーリーがあると楽しさが倍になるんだなと実感しました。
東鎌尾根も間近に見れてイメージを作ることができたので、また来年槍まで縦走できたら良いなと思います。